フィンランド鉄道 Lahden oikorata線 Mäntsälä~Haarajoki レフ・トルストイ号とソ連製Sr1型電気機関車

ロシア鉄道 レフ・トルストイ号 Железные дороги Финляндии Электровоз Sr1-3018 Siperian susi Sähköryssä

座標: フィンランド, ウーシマー県
光線: 午前順光。影は出ない。
環境: 陸橋の下。雨風は凌げる。
アクセス: ヘルシンキのカンピ・バスターミナルから665系統でSpännärintie停留所へ。徒歩15分。詳細後述。

VR Class Sm3 フィンランド鉄道 ペンドリーノ
フィアット製のペンドリーノSm3

かもめ食堂とムーミンと、ロシア・ゲージの国フィンランド。ヘルシンキに鉄道が敷設された時、まだスオミは帝国の支配下にあった。地理的にも政治的にも、ヨーロッパの標準軌ではなく、ロシアの広軌が採用されたのは必然で、軌間(ゲージ)の他にも当地の鉄道は隣人の影響を受け続けている。例えば、フィンランドが初めて手にした電気機関車はソビエト製だ。1960年代末に電化区間が誕生したのを受けて、国鉄は敢えて機関車の発注先にソ連の名門メーカー・ノヴォチェルカッスク電気機関車工場(НЭВЗ)を選定した。

MADE IN USSR VR Sr1 電気機関車

フィンランドにも選択の自由はあっただろうにと、同情する人もいるかもしれない。しかし、当時彼らは繊細な舵取りを迫られていたのだ。確かにフィンランドは議会民主制を有する資本主義国であるが、かといって立地とソ連に対する敗戦の歴史は、スオミの西側入りを許さなかった。結局フィンランドは中立を堅持しつつも、東側との連帯をアピールする必要性から、国軍はミグ戦闘機を、国鉄はSr1型機関車を導入した。

モスクワ ヘルシンキ ロシア鉄道 トルストイ号
ヘルシンキ中央駅で出発の時を待つレフ・トルストイ号

かくしてフィンランドは、EUで唯一ソ連製の電気機関車を運用する国となった。実際のところ、彼らは苦労させられたのか?実はSr1型は多少手直しされたとはいえ、1973年の登場以来全車が現役(事故廃車された2両を除く)だという。要するに、ソ連製品が優れた品質を誇っていたことは厳然たる事実であって、問題は誰が整備するのかという一点に尽きるのだ。側面のリブと丸窓がいかにもノヴォチェルカッスク生まれらしいSr1型は、スオミではシベリアオオカミ(Siperian susi)や電気ロシア野郎(Sähköryssä)という愛称で親しまれ、今も国際列車の先頭に立っている。ヘルシンキとモスクワを結ぶレフ・トルストイ号は、フィン人が乗り組むソ連製機関車とロシア鉄道の客車がペアを組む素敵な列車だ。

レフ・トルストイ号 Лев Толстой Поезд
レフ・トルストイ号の気品ある行先標

アクセスについて。ヘルシンキ中心部のカンピ・バスターミナルからMäntsälä行きのバスに乗ろう。665系統が発車する10番乗り場は、同国最大の複合ターミナルの最下層に位置している。時刻表はこちらで確認可。下りトルストイ号を撮るなら9時45分発がちょうどいい。それにしても、北欧は公共交通機関の案内ひとつとっても洗練されていると、泥だらけのマルシュルートカで鍛え上げられたロシアヲタクは感動してしまう。この種の冊子は、旧ソ連諸国では滅多にお目にかかれない。同様に、郊外バス車内でもクレジットカード払いが可能なことに衝撃を受けた。ロシア人は今でも車掌から紙の切符を買っているというのに、フィンランドではワンマンバスでカード決済できるのだ。国境は時空さえも隔てていると祖国を恥じながら暗証番号を打ち込むと、レシートには11.80ユーロとある。隣国なら3ユーロ(約200ルーブル)かからない距離だ。すぐさま私はロシアを再評価した。

Mäntsälä Kamppi Spännärintie Bussi
Spännärintie停留所に滑り込む665系統

バスは地上に出ると、滑らかなアスファルトの上をひたすら北上し、静謐なヘルシンキ近郊を走り抜けてゆく。派手な配色だが破綻のないトーンの北欧団地が沿道から消え、田園地帯に入るとSpännärintie停留所に到着だ。ここまでだいたい1時間ちょっと。ちなみに、フィンランドの路線バスには降車ボタンが備え付けられているから、ロシアと違って運転士に対し下車を決意表明する義務はない。バスを降りたら、丁字路より南進し、ライ麦畑を15分ほど突っ切れば撮影地の跨線橋に辿り着ける。のんびりとアレグロ号やトルストイ号をつかまえよう。帰りのカンッピ・ターミナル行きは13時50分頃にやって来る。

※Lahden oikorata線は高速新線。ロシア・ゲージだからといってロシア感覚で線路に近づかないで!
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撮影: 2017年8月
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