座標: ロシア, モスクワ連邦市
光線: 午後順光。日没まで影は出ない。
環境: 鉄橋は住民の近道扱い。線路しかないが人通りは絶えない。
アクセス: メトロ7号線Спартак駅から徒歩20分。もしくはБольница МПС電停から徒歩15分。詳細後述。
リガ方面線を下るラトビア・エクスプレス |
21世紀の共産団地と新型エレクトリーチカを絡めて撮って、新世代のロシア鉄道を体感しよう!リガ方面線は、長距離列車が殆ど走らないため華がないと思われがちだが、実は最新鋭の近郊電車ЭП2Д型(1枚目)が集中配置された路線のひとつだ。滑らかなエレクトリーチカを撮りたい方にはオススメできる。
ラトビアの首都リガ近郊にて |
リガ方面線の起点であるリーシスキー駅は、モスクワの9大ターミナルの中で2番目に影が薄い。ちなみに、栄えあるトップはサヴョロフスキー駅だ。リガ駅の評判も芳しくなく、閉鎖され、駅舎がショッピングモールに改装されるという噂話が出たほど。優等列車用のプラットホームはいつも空っぽだが、モスクワとラトビアの首都を結ぶLatvijas Ekspresisだけが毎日細々と乗り入れることで、辛うじてリガ駅は駅名に恥じない働きをする。
夏の西日を浴びるラトビア・エクスプレスを撮れるのが、このモスクワ運河に架かる鉄橋だ。1936年に完成したアーチ橋からの眺めは素晴らしく、スターリン時代の閘門や、運河とモスクワ川の合流点を一望できる。
ヴォルガ川とモスクワ川の水位差を調整する閘門 |
世界最大級の鉄筋コンクリート橋となったバチェリサ橋は、すぐさまソ連の誇りのひとつになって、その雄姿は切手や銀幕、メトロ駅の天井画にも登場している。しかし、その裏には苛烈な強制労働があり、時代が違えば平穏に暮らせたはずの万単位の「人民の敵」が命を落とした。当時のモスクワ近郊には、運河建設に労働力を供給する目的で収容所が設置されたほどだから、スターリン期の近代化の本質が見える。運河のみならず、橋の建設にも多数の囚人が動員され、24時間体制の突貫工事が実施されたという。囚人の中には、もちろん本物の犯罪者も含まれていたが、とはいえ強制労働がソ連社会に復帰するための再教育の場(Перековка=ペレコヴカ)として捉えられていたから驚きだ。彼らの名誉のために補足すると、橋の品質に不安は一切ない。ゴルバチョフ時代にВЛ11型機関車を用いて行われた耐久試験の結果、列車の運行に制限は要らないことが明らかになっている。
共産団地の面影が消えつつあるロシア世代のマンション |
アクセスについて。鉄道敷地内に侵入するなど言語道断という人は①を、郷に入れば郷に従え派は②をお選びください。②の方が楽です。
橋も閘門も細部までソビエト的 |
①まずメトロ紫線のСпартак駅で下車しよう。この駅はモスクワ最古の未成駅(Станция-призрак=幽霊駅)であったが、ツシノ飛行場の跡地にスパルタク・スタジアムが建設され始めると、数十年ぶりに工事が再開された。紅白のスタジアムを時計回りに迂回し、大通りまで出たら、ガソリンスタンドの角から脇道に入ろう。この角に停留所があるので、バスを使えばさらに便利だ。築堤に沿って10分ほど南下すると、右手に保線員用の階段が現れる。それを上れば到着だ。柵など一切ないから問題ありません。
ロシア人は線路を歩道の亜種と捉えている |
②メトロ緑線のСокол駅でトラム6系統に乗り換えて、Больница МПС電停で下車。一駅先のモスクワ運河電停の方が近そうだが、橋から見て運河の左岸からだと、柵に阻まれ撮影地まで到達できない。電停からУлица Габричевского(Улица=通り)を南下し、病院の角を右折。通りの突き当りで小道に入る。以降の経路は、獣道まで網羅するYandex.Mapsを参考にしてほしい。ロシアでは頼りにならないグーグルマップは投げ捨てよう。保線員用の階段まで辿り着いたら、ゴールは目前だ。注意深く橋を渡ろう。鉄橋内には待避所もあり安心だが、ロシアの線路上では毎年数千名が死傷していることを忘れてはならない。
撮影: 2017年8月
グーグルマップ上の撮影地一覧
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