ロシア鉄道モスクワ鉄道支社 Мытищи~Тайнинская 北京発の国際列車と複々線のエレクトリーチカ

北京 モスクワ K3次 国際列車 Москва Пекин ЭП2К-177

座標: ロシア, モスクワ州
光線: 午前順光。冬でも影は出ない。
環境: 勝手踏切はあるが、人通りは疎ら。
アクセス: Тайнинская駅から徒歩10分。Рабочая停留所から徒歩5分。

ロシア 中国 国際列車 K3次 K4次
人民鉄路の緑皮車にロシア鉄道車がぶら下がる

世界の中心ってどこだろう?国際列車の乗り入れ本数で決まるなら、それはモスクワに違いない。ロシア鉄道は東西の約30ヶ国と連絡運輸協定(※現在は23ヶ国と運行中)を締結しており、馴染み深いРЖДの鮮やかなロゴはユーラシア大陸のあらゆる都市で目にすることができる。シベリア鉄道の玄関口であるヤロスラフスキー駅は、東方の東側諸国、すなわち中国やモンゴル、北朝鮮とソ連を繋ぐべく設定された外交列車群の終着駅でもあり、この記事では、彼らのラストスパートを手軽に撮れるヤロスラヴリ方面線の複々線区間を紹介したい。

デーミホヴォ車両製作工場 Демиховский машиностроительный завод ЭД4М-0224
デミホヴォ機械製造工場のエンブレムが輝くЭД4М

モスクワ北東のヤロスラフスキー駅を起点とするヤロスラヴリ方面線は、ゴーリキー(ニジニ・ノヴゴロドのソ連時代の名称)方面線へ伸びる支線が分岐するムィティシ駅まで複々線が続く。ひっきりなしに通過するエレクトリーチカ(近郊電車)に加え、極東ウラジオストクから約9,000キロを踏破してきたロシア号や、前述した欧亜連絡国際列車など、数多のシベリア鉄道の優等列車が経由する重要な線区だ。ちなみに、中国国鉄が受け持つウランバートル経由の北京発モスクワ行き(K3次/003З)は、毎週月曜の13時58分にヤロスラフスキー駅に到着する。モスクワで天安門のレリーフを掲げた緑皮車を撮影できる大陸のスケール感には、感嘆せずにいられない。

エレクトリーチカ 地域カラー ヤロスラヴリ ЭД4М-0273
ヤロスラヴリ色は貴重な地域カラーの生き残り

ヤロスラヴリ方面線はエレクトリーチカを撮っても面白い。まず何より本数だ。本線のアレクサンドロフ方面や、支線のフリャジノ、モニノ方面など、多数の系統が集中する複々線区間には、ラッシュ時は毎時20本以上の長い長いЭД4М型がやって来る。また、地域カラーが残存する数少ない線区であることにも注目してほしい。かつてロシア鉄道では、列車、車種、支社ごとに様々な塗装が乱立した時期があったが、ロシア社会全体がそうであったように、やがて混沌の時代は過ぎ去り、モスクワは統制(※ロシア鉄道の場合はリブランディングの推進)を強めた。今ではソ連国鉄と同様に、カリーニングラードからサハリンに至るまで標準色が行き渡りつつあるものの、皮肉なことに本社のお膝元では、編成数が桁違いなせいか塗り替えが完了していない。

ロシア エレクトリーチカ ЭД4М型 ЭД4М-0437
2012年以降に製造されたЭД4Мは精悍な顔立ちに

ところで、なぜ複々線なのに線路が三本しか写っていないのか?答えは単純だ。下りの急行線と緩行線の間に立っているからだ。日本の迷惑撮り鉄もびっくりのロケーションだけど、現地マニアの間ではよく知られた撮影地なので問題ない。実際のところ、線路内に人が立ち入ったくらいで緊急停止していたら、ロシアの電車は隣の駅すら辿り着けないから、エレクトリーチカは警笛さえも鳴らさず私の両脇を駆け抜けてゆく。


ロシア モスクワ 勝手踏切 人身事故
メトロワゴンマーシュの工場へと続く勝手踏切

実はヤロスラヴリ方面線は、線路横断者の死傷者数が突出して多い線区だ。よくある事故は、外側の緩行線を見送った直後に、急行線に轢かれるパターン。事故防止に頭を悩ます鉄道当局は、もはや物理的に線路を隔離しない限り、ロシア人を列車から遠ざける術はないと悟った。複々線区間には絶対に乗り越えられない高さ3mの壁が設置され、住民は跨線橋か正規の踏切まで回り道する羽目になると誰もが考えた。しかし、DIYに長けたロシア人を見くびってはいけない。彼らは鉄板を切り取り、再び線路を歩道として使い始めてしまった。その執念には感服するほかない。この隙間はモスクワ各所で見られ、勝手踏切は永久不滅なのだと告げるある種のモニュメントとして機能している。
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撮影: 2018年2月
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