切符を日本で予約するには?アブハジア鉄道編

アブハジア スフミ駅

ロシアとグルジアに挟まれた、カフカスの小国アブハジア。風光明媚な国土を有する、旧ソ連屈指の保養地だ。かつてはスターリンも別荘を置いた。黒海沿岸に建設された大型サナトリウム群は、ソビエト全土から労働者を受け入れ、彼らにとって労組から支給されるアブハジア行き休暇バウチャーはプレミア物だった。

ロシア鉄道 黒海 2ЭС4К-127
ロシア・クラスノダール地方にて

ソ連崩壊と紛争はアブハジアに暗い影を落としたが、現在ロシアでは人気が復活。手頃な価格で楽しめる友邦の南国リゾートは、今やクリミアと並ぶ一大観光地となった。首都スフミを目指す夏の列車は、南方の日差しを浴びに行くロシア人たちで満員だ。

ロシア鉄道 寝台
モスクワからスフミへ南下中の306列車にて

ところで国有のアブハジア鉄道は、独自のオンライン予約サイトを有していない。だが、ロシアとアブハジアを繋ぐ国際列車は、繁忙期でも日に数本。1ヶ月前に上段しか取れない空席状況では、現地購入は心許ない。

でも心配ご無用です。ソ連が遺した旅客総合管理システムが、日本からの予約を可能にします。


アブハジア鉄道 駅員 スフミ駅
第三世代のエクスプレスを操るアブハジア国鉄職員

1972年、キエフスキー駅の窓口で産声を上げたエクスプレス(※我が国で言うところのマルス)は、ソ連国鉄初の自動化された座席予約システムであった。寝台やチッキの手配、精算業務などの一括管理を実現した赤いマルスは、煩雑な発券業務から駅員を解放し、やがてユーラシアの半分を覆う巨大ネットワークへと成長した。日本のマルスは深夜時間帯は停止するが、約15万キロのロシア・ゲージは9つのタイムゾーンに跨っているため、エクスプレスは24時間眠らない。

沿ドニエストル鉄道 切符 乗車券
沿ドニエストル鉄道がエクスプレスで発券した切符

ソ連の鉄道網が国境によって切り刻まれた後も、ロシア鉄道によりエクスプレスは維持され続け、今もバルト三国とCIS諸国の大半をカバーしている。第二世代になると西側のシステム(ドイツのKurs 90)とも接続された。現在はエクスプレス3(Экспресс-3)が運用中で、もちろんアブハジア鉄道にも提供されている。なお、初代エクスプレスのメインフレームは、アルメニアで開発されたソビエト製だったが、最新型ではIBM製が採用された。

アブハジア 鉄道 2ТЭ116У-0199
艶のあるロシア車と朽ち果てたアブハジア車

というわけで、アブハジアの列車はロシア鉄道で予約可能だ。電子登録にも対応し、Eチケットだけで乗車できる。合わせて国内短距離利用の購入も解禁されたから、アブハジア鉄道に関わる予約制限は、大幅に緩和された形になる。ちなみに、同国の鉄道は実質的に隣国の管理下にあり、予約システムのみならず、旅客輸送そのものがロシア鉄道によって担われている。

以前はアブハジア発着の列車は電子登録不可だった。EチケットにはДЛЯ ПРОЕЗДА НЕДЕЙСТВИТЕЛЕН! ПОЛУЧИТЕ БИЛЕТ В КАССЕ, ЛИБО ТЕРМИНАЛЕ(乗車券は有効ではありません!窓口か券売機で切符を受け取ってください)と斜めに注意書きが入り、事前にロシア国内で紙の乗車券を発行する必要があった。


アブハジア ロシア鉄道 ガグラ アドレル
ガグラ駅で発車を待つアドレル行き国際近郊列車

夏季のみ運転される、同国第二の都市ガグラと、ロシアの国境の街アドレルを結ぶ便は、普通列車のため予約できない。国際列車大国ロシアと言えど、列番が四桁の近郊列車による越境は非常に珍しい。切符は車内でお買い求めください。

乗車記(後日更新)へ続く。 こちらは当時のツイート。

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撮影: 2017年8月

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