ロシア鉄道北カフカス鉄道支社 Хоста~Известия 二階建てのバカンス列車

ロシア鉄道 2階建て 2ЭС4К-105

座標: ロシア, クラスノダール地方
光線: 午前順光。早朝は保養所の影が出る。
環境: サナトリウムとビーチに挟まれ、踏切は無いが人通りは絶えない。
アクセス: Известия駅から徒歩3分。アドレル駅からバスでСанаторий Известия下車、徒歩10分。

アドレル ビーチ ЭС1-024

ロシアにも南の海はある。ソチはソ連の宮崎だ。ソチといえば冬季五輪が思い出されるが、夏のクラスノダール地方は日本人でもまいるほど蒸し暑い。バカンスシーズンになると、北カフカス鉄道にはロシア全土から黒海を目指す行楽列車が押し寄せ、車窓に映る砂浜のパラソルに乗客は胸を躍らせる。一方撮り鉄は、客車に掲げられた行先標に目を奪われるだろう。モスクワやペテルはもちろん、極北のムルマンスクやヴォルクタ、果てはシベリアのイルクーツクから直通列車が南下してくるのだ。日本人なら乗車中に休暇を使い果たしてしまう。

ロシア 機関車 2ЭС4К-124

広大な路線図を思い浮かべ、長い長い道中を想像するのは楽しいが、ソチでそんな夢想は許されない。20両以上の客車がようやく過ぎ去ると、その頃には次の列車の前照灯が海岸線に現れるから。夏は臨時便が大増発され、9時台のアドレル駅(※ソチの南端)には、10分に1本の間隔で2階建て客車など多彩な顔ぶれの列車が殺到する。

ソチ モスクワ 鉄道 2階建て ЭП20-020

オリンピックに合わせて導入された2階建て客車は、ロシア鉄道の期待の新星。クペ(コンパートメント化された開放B寝台)が無理なく2層に配置され、若干荷棚が削減されたとはいえ、西側に劣らぬ居住性を提供してくれる。もはや我々はソヴォーク(ソ連人に対する蔑称)ではないと喧伝すべく、ソチ周辺には最新鋭の車両が集中投入されたのだ。五輪直前まで鼻面に赤星を付けた機関車が駆け回っていたが、いまモスクワ発のダブルデッカーの先頭に立つのは、フランスの血が入ったЭП20形。その威容は新時代を予感させるけど、鎌トンカチが刻印されていない機関車はスマート過ぎて味気ない。コルゲートを廃した2階建て客車はこちらも洗練された外観と言えるが、上段ではまともに着替えられないうえ、何よりサモワールが無い。ケトルで注がれたチャイは味気ない。平屋の客車が恋しくなった。

2ЭС4К-067

客車はある程度バラエティに富み、ドゥヴフエタージニイ(ダブルデッカー)は新旧の塗装が混在し見応えがあるものの、機関車は前述の通り世代交代が完了しているため、大半が国産の2ЭС4К形だ。しかしこの新鋭貨物用機関車にも既に差異があり、製造時期によって灯火のレイアウトが微妙に異なる。

ラースタチカ ソチ ЭС1-041

無論エレクトリーチカも刷新され、シーメンス社のデジロに取って代わられた。初期導入のソチのラースタチカ(Ласточка=つばめ)は、正真正銘のドイツ製。このЭС1形は交流電化の五輪新線に乗り入れるため、交直流電車として発注されている。おかげで直流の沿岸部から、急勾配に対応すべく交流が選択された山岳区間へと直通可能だが、スキー会場へのアクセス路線として建設されたクラースナヤ・ポリャーナ線は無用の長物として批判を浴びており、高価な交直流電車も負債のひとつになったことは疑う余地がない。ちなみに、モスクワ大環状線などで運用中の都市型のЭС2Г形(※ГはГородской=都市型を意味する)は、独露合弁メーカーのウラル機関車製だ。

トレインビュー ホテル アドレル コーラル

撮影地はリゾートエリアのど真ん中に位置しているから、宿や食事の心配は要らないし、列車の合間にアイスクリームだって買いに行ける好立地。トレインビューホテルも多数存在し、中でも60年代に建設され、かつてはチェルノブイリやレニナカンからの避難民も受け入れたホテル・コーラルは特におすすめ。ソ連時代のサナトリウムで、ロシアの汽笛を聞きながら眠りに就けるなんて!懐かしい吊り掛けモーターの駆動音に誘われベランダに出てみると、ラースタチカに押されながらも踏ん張る旧型エレクトリーチカの灯りが見えた。
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撮影: 2017年8月
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